第57回ランキング
- 第 1 位 ( ⇒ )
NBS フジ・木曜劇場「白い巨塔」劇中効果音楽 [加古隆] - 第 2 位 ( ⇒ )
DREAMS COME TRUE「やさしいキスをして」
SBC TBS・日曜劇場「砂の器」主題歌 - 第 3 位 ( △ )
NHK総合・金曜時代劇「はんなり菊太郎2 京・公事宿事件帳」テーマ音楽 [野見祐二] - 第 4 位 ( ⇒ )
TSB YTV・ドラマ「乱歩R」劇中効果音楽 [仲西匡・吉川慶] - 第 5 位 ( ★ )
NBS フジ・火曜時代劇「剣客商売」テーマ音楽 [篠原敬介]
♪ 高い域のタイトルバックと共に新シリーズのテーマ音楽が佳曲。
週間選曲リストで今週 2位の主題歌が流れる、SBC TBSテレビ・日曜劇場「砂の器」タイトルバック(エンドロール)を視てみると、原作者の下に「潤色」と題し、橋本忍・山田洋次が、スタッフの一員としてクレジットされている事に気付きます。私も数多くのテレビドラマのタイトルバックを視てきましたが、一度あるか ないかと言う珍しいクレジットです。
「砂の器」の原作は、松本清張 氏の同名新聞小説。1960年から 1961年にかけて読売新聞夕刊で掲載されていました。ハンセン病患者の差別に触れた刑事サスペンスであり、1974年「砂の器」映画化の際は、大変な物議を醸しました。そのためシナリオには、細心の工夫がされています。このシナリオを書いたのは、橋本忍 氏 そして 山田洋次 監督です。
「潤色」(じゅんしょく)は、色彩用語で「うるみいろ」とも呼ばれます。本来の語彙は「彩りを加える」。歴史書などの史実記載に、著者がドラマティックにする意図で創作的脚色をしてしまう事を、文学的潤色と表現する場合もあります。この「砂の器」スタッフ クレジットにおいての「潤色」とは、脚色のベースとなる制作をしたという意味のシナリオ用語です。
まだ映画(ドラマ)化されていない原作へ、最初にシナリオの創意を加えたライターのクレジットは、まず「脚色」です。その後 リメイクなどで最初のシナリオの創意に基づき、もう一度具体的なシナリオをト書する場合、その最初のライターの人達や創意自体が「潤色」になる解釈だと思われます。今回の場合は、原作 ➝ 潤色 ➝(ドラマの)脚色という流れになるはずです。
原作・脚色が、脚色・潤色と根本的に違うのは、シナリオ制作が 脚色ひとつだけという点です。共同脚色が、脚色・潤色と根本的に違うのは、ふたつのシナリオ執筆に大きな時間差が無い点です。但し、原作・脚色なのに、原作・潤色・脚色と並ぶ場合もあり、原作が小説で、最初の脚本家が「小説を潤色」し、それをリメイクしたシナリオは 脚色となる訳です。
潤色を改めてスタッフ クレジットで指定している場合とは、時系列に並んだシナリオ制作において、それぞれ独立性が極めて高く、かつ著作権的な区切りも強く反映しています。特に、原作が明確な作品を映像化した後に、時を経て原作に企画の起点が戻らず、映像化された作品が起点となりベースになってリメイクする際には、潤色というクレジットが出てきます。
「砂の器」は、社会の深層を鋭く裂いていく様なサスペンスですから、まず原作の小説、そして1回目の映像化のシナリオに、それぞれ強く独立した著作性があります。藝術の創造は、それぞれ尊重されなければなりません。「潤色」とは、映画や演劇では時々視かけますが、テレビドラマの世界では、なかなか視る事ができない、極めて珍しいスタッフ・クレジットなのです。